前回に続き、トレーニング方法です。
今回は、トレーニング項目その3 発音です ^^
これまでとは一味違う
トレーニング項目その1「文法」とその2「語彙」においては、受験型の詰め込み学習が通用する領域でした。
しかし、発音トレーニングについては詰め込みとは本質的に異なる勉強方法が必要です。おそらく、これまで軽い気持ちで英語を勉強してみようと思った人の99.9%以上の人は、人生でやったこともないような勉強をすることになるでしょう。
ただし、これを勉強ではなくスポーツと捉えれば、そのトレーニングに近いとは思います。つまり、そんだけキツイ継続練習が必要ということです。
というわけなので、本気で学びたい人だけがこの先に進んで下さい。本気度が薄く、せっかく勉強を始めたのに途中で降りるかもしれない恐れがあるなら、さっさと損切りした方が幸せです。自分が本当に好きなこと、楽しいと思えるをした方が人生の幸福度が向上するでしょう。
それを覚悟の上で、英語をそれなりにストレスなしに使えるようになりたいという強い気持ちがあれば、お付き合いいただければ幸いです。
発音力の大切さを感じてみる
さぁ、茨の道(?)へようこそ。
唐突ではありますが、次の英文を音読してみて下さい。
例文
普通に読んで見る
いかがですか?多分、日本人による一般的な発音で記述すると、こんな感じになると思います。
こういう発音でしゃべることが悪いと言っているのではありません。このような日本語発音であっても、大きな声ではっきりと伝えればこちらの意図を伝達することは可能です。
ここで重要なのは、肝心の相手側がこんな発音では話してくれはしないから、何を言っているのか理解できないことが圧倒的に多いということです。
アメリカン風に書いてみる
この例文をアメリカ人が読んでいる音声を聞いて、できるだけカタカナでの表記に努めた形にしてみます。
全然違いますよね。衝撃的な短さですよね。それに、各単語で間合いを置く場所とつなげてズラズラっと言ってしまうところがあって、リズムのようなものを形成しているのです。カタカナ英語では決してこの構成は取れません。
カタカナ英語しか分からない状態で、こんな発音を聞き取れるはずがありません。
正しい発音を理解する大切さとは
これは、日本のローマ字読法教育の弊害です。ローマ字自体は否定しませんが、本来英語教育の段階でしっかりフォローが必要なのです。
そして、日本人自身も、自分たちの発音がネイティブと違うということは分かっているんだけど、どうしてこんなにも違うのか、そしてどのように真似をすればその発音に近づくのか、全く検討もつかないのです。そういう教育ができる先生がそもそも現場にいないのです。
結果、自分なりに英語っぽく話そうとしているのか、良く聞き取りづらいゴモゴモ和製英語が飛び交って、結局余計にコミュニケーションが取りにくくなっているのが問題なのです。
目的はコミュニケーションの円滑化 ネイティブと同じように話すことではない!
誤解を招きやすいので何度も繰り返しますが、ネイティブと同じ発音で話せるようになる必要はないのです。彼らの発音がどのような特徴を持っているのかを理解することで、互いのコミュニケーションを円滑にすることが目的なのであり、それを体得する上で最も効果的な手段として彼らの発音の模倣を試みようとしているのです。
というわけなので、ここでご紹介する方法でトレーニングをしても、ネイティブみたいに話せるようになることを保証するものではありません。中にはそういう人もいるでしょうが、最後はセンスに依存します。私も、全くネイティブのように話すことはできません。ただ、色々な英文を耳で聞き理解できるようになりますし、相手にも伝わりやすくなります。
そもそも日本人なんですから、ネイティブと同じになる必要なんてないんです。インド人の英語ったら、すごいなまってますよ笑。それくらいずうずうしく言ってもいいと思います笑。
前置きはこのくらいにして、発音に関する学習項目について説明します。
発音記号
発音と言えばなにはともあれ、これ!
違いが分かるか…?
さっそくですが、次の単語の発音の違いを理解できるでしょうか?
・very, berry
・think, sink
・collect, correct
うーん、日本人にとってこれは難しいのですが、全部違うんです。ネイティブはみんなこれを区別して使ってくるから困ったもの?なのです汗。発音の違いで意味を切り分けるのですから。
違うんだ!!!
では、これらの発音を、発音記号で書き下してみましょう。
・very[véri], berry[béri]
・think[θíŋk], sink[síŋk]
・collect[kəlékt], correct[kərékt]
高校英語で、よく分からずにセンター対策で暗記したって人も多いと思われる、アレです。取り敢えず違うってことだけは暗記したと思うのですが、その違いを意識して自ら発音することができますか?
英語教師の方でも、これらの違いをはっきり意識して使い分けている方は限られるのではないでしょうか。ぶっちゃけ受験で使うだけなら暗記すれば点数を取れてしまうので、生徒としてもちゃんと勉強するモチベーションがわかないでしょう。
しかし、これが分かるか分からないかだけで、世界の見え方が変わります。あー、そうだったのか!のオンパレード!感動の嵐!この後登場する「ディクテーション」や「シャドーイング」の学習でも大いに役立つ、発音およびリスニング学習の基礎をなすのが、この発音記号なのです!
おすすめ参考書
発音記号を勉強するおすすめの参考書をご紹介します。
松澤喜好, 英語耳、アスキー・メディアワークス、2010.
- 採用理由
- リスニングが全く伸びずに悩んでいたある日。「発音できない音は聞き取れない」の帯に惹かれました。
- 音源はもちろん、発音する際の口の形のイラストが分かりやすく掲載れている。
- 具体的な練習方法まで丁寧に解説されています。
Ann Cook, American Accent Training, Barrons, 2012.
- 採用理由
- アメリカ人が英語学習者向けに作った本で、正しいアメリカン英語を身につけてもらうことを目的に書かれています。
- 著者は各国の訛り癖と対策法がよく調査されてあり、日本人のクセも理解しているようです。
- 鏡や色つきマーカを活用した発音訓練方法など丁寧に解説しています。
- 英語で学習できるので、発音の練習をしながらリスニングとリーディングの勉強が出来ると捉えることができます。
私の学習例
あくまで私の例ですが、どのように学習したかをご紹介します。
毎日やる!
ほぼ毎日ではありません。本当に毎日です。
なんとなーく携帯いじってる時間があったら、その時間を使って発音練習を必ずやるようにしました。 自分との戦いです。
もちろん、毎日2, 3時間やるのではありません。1日たった10分程度の話です。本気でやる気持ちさえあれば、できない時間ではありません。
自分の音声をたまに録音して、参考書の音源と比較!
発音して終わり!ではただの自己満足になってしまいます。
本当に自分が正しく発音しているかを確認するフィードバックをかけましょう。
自分では「出来た!」と思っても、実際に自分の声を聞いてみるとあからさまな日本語訛りだったりして、結構萎えることが多いですorz
そして、このフィードバックを何度も繰り返す。音源と自分の声を何度も何度も聞き比べるのです。どこがどう違うのかを分析して、近い発音になるまで何度も練習をします。
口の形、息のはき方、のどの力の入れ方で音が変わる感覚を徐々に掴んでいきます。顔が筋肉痛になれば上達している証拠です。英語の発音では日本語で使わない筋肉を使うので、口に違和感が生じるのは当然です。
時には昔録音した自分の音声と、最近録音した音声を聞き比べ、上達していることを確認するとモチベーションアップにも繋がります!
シャドーイング
発音・リスニング学習で切っても切れない王道トレーニング法です。プロの翻訳者もこの道を通っているという結構ハードなトレーニング方法です。
シャドーは影。つまり、英語をリスニングしながらそれを影の如く追いかけるように、出来るだけ聞いている音声と同一の発音になるように、自らの発音を反復訓練をします。
ある程度まとまった文章をやると効果的ですが、とにかく時間と手間がかかるのが難点です汗。
冒頭1センテンスだけでも、出来るようになるまで最低100回以上は繰り返すことになるでしょう。寧ろ100回で納得できる程の発音に達するなら、相当優秀だと思います。私はセンスがなかったので、数百は必要でした…。
単語の繋がりのルールが分かる
さて、シャドーイングをすると何が理解できるようになるのか?
英語の発音は、単語の組合せと繋がりで変化します。色々な英文を聞くことで、そういったパターンを覚えることが出来ます。
- 例えば、子音+母音は盛大にくっつく等
- take them → ティケm(超弱いm)
- like it → ライキッt(超弱いt)
先程音読した英文も、このルールに従うところ大なのです。
・ ゥケィ, アィゥダ ライカ タッ タァカバゥ ゥワッ アィゥディンヴィジュヌァザナィディールボゥス
これが理解できるということは、リスニングに非常に有利に働きます。トレーニング自体はキツイですが、慣れてきたときの爽快感は一入です。
おすすめ参考書
シャドーイングによる勉強法が解説されているおすすめの参考書をご紹介します。
国井信一ら, 究極の英語学習法K/H System シリーズ.
名前が胡散臭いと言われることがありますが、中身は本物です。
- 採用理由
- シャドーイングの真髄が詰まっています。本当にシャドーイングはこれだけやれば十分でしょう。
- 学習の進め方からフィードバックの方法まで極めて丁寧に解説されています。
- 文章から作者の熱意がひしひし伝わるほどの高密度な指導が待っています。
これはプロの仕事です。翻訳者養成学校にでも連れて行かれたのかと思うような、不思議な世界に誘われる感覚を味わうことができます。 もちろんその分覚悟はいります。中途半端な気持ちでは絶対続かないカリキュラムです。
ですが、慣れてくれば世界が変わります。
私の学習例
あくまで私の例ですが、どのように学習したかをご紹介します。
最悪2日に1回やる!
発音記号の方では毎日と書きましたが、シャドーイングは結構疲れるので休みを入れながらやったほうが良かったです。
もちろん、ハマってしまった時はドンドン練習しまくれば良いのですが、張り切りすぎて続かないよりは適度の手を抜きつつ継続できるほうが良いかもしれません ^^
自分の音声をたまに録音して、参考書の音源と比較!
これも発音記号と同じです。特に、究極の英語学習法K/H System シリーズの書籍ではこのフィードバックを大切にしているので、この書籍に従って勉強するなら嫌でもフィードバックをかけることになります。
発音記号の項目で単語単位での発音練習で納得のいく結果が得られていても、文章になった瞬間に信じられないほどの日本語訛りに戻っていて、かなり落ち込みます。ウソだろ?今までの自分の苦労は一体何だったのかと絶望します。単語読みと文章の朗読は、それほどまでに違うものなのです。だから、シャドーイングも必要なのです。
とにかく反復!でも回数をこなせばよいというものではない
でも、大丈夫です。単語単位で学んだ知識絶対にシャドーイングに必要ですし、後に生きてきます。10回、20回では大した伸びは期待できませんが、100回、200回と練習を繰り返すと徐々に改善していきます。
大切なことは、回数を増やせば良いということではなくて、あくまで発音の上達度合いを評価する必要があるということです。1000回やっても上達していなければ無意味です。一回一回の練習に全神経を注いで、
週に1回程度のペースで録音をして、少しずつ上達する感覚を味わいましょう。モチベーションの向上に繋がります。
きついからこそ、できるようになったときの達成感も大きいのです。
ディクテーション
これも、シャドーイングについで発音・リスニング学習における王道トレーニング法の一つです。
リスニングの練習と称して、色々な英語を聞き流すことを勧める教材もありますが、そもそも私のようにリスニングが超々苦手で、聞き流すなんてことができないレベルの人にとって、聞き流しリスニングは単に時間をロスするだけになってしまいます。
そこで、ディクテーションです。短い英文を繰り返し聴いて、書き出すトレーニングです。
冠詞1つたりとも逃さない!
聞けない単語が一つでもあれば何度も聞き直します。三単現のs、冠詞、前置詞など、微妙にしか発音されない単語も一つも漏れなく聞き取ってやるという強い意志をもってやりましょう。
慣れないうちは短文でも10~20回程度は繰り返し聞くことになるでしょう。
発音を真似する必要がない分シャドーイングよりは負担は小さいので、たくさんの英文で練習することができます。Web上にスクリプト付きのリスニング教材も豊富にありますし、お手元に音源付きの参考書さえあれば何でも教材に成りますので、ネタには困らないでしょう。
おすすめ参考書
ディクテーションによる勉強法が解説されているおすすめの参考書をご紹介します。
えいご道場、インターチャネル・ホロン、2006.
これは古いPCソフトなのですが、中身は本物です。まだ中古が残っているようではありますが、さて最新のOSで動作するかどうかは分からないのが残念です…。
- 採用理由
- 私は文字を手で書くのが遅いし非効率なのですが、タイピングは好きなので、効率化を考えてPCソフトにしました。
- GUIがディクテーションに最適化されているので、取組みやすいです。
- 本ソフトは、本当にアルファベット1文字でも抜けていると不正解にされ続ける鬼ソフトです。あまりに厳しいのでイライラしますが笑、その厳しさが力になります。
- 1文が短いので、聞き取りに集中しやすく、濃密な訓練ができます。
- システム上、10センテンス/日となっています。30~40分/日を3ヶ月程度続ければ一周完了できるペースです。何周もしましょう。
えいご漬け 改訂版、プラト、2005。
Amazonによると、一応Windows10でも動作するのがこちららしいです。
使ったことが無いので明確におすすめするのは難しいのですが、コンセプトとしてはえいご道場に通じるものがあるので、参考に掲載致します。
WEB音源
WEBでのスクリプト付きリスニング教材です。シャドーイングやディクテーションに活用可能です ^^
VOA
- 無料です。音声のダウンロードも可能です。
ニュースで英会話
- 音声を聴くためには会員登録は必要ですが、NHKのサイトであるという安心感があります。
私の学習例
あくまで私の例ですが、どのように学習したかをご紹介します。
基本は毎日だけど
基本は毎日ですが、これも発音記号の様に本当に毎日でなくてもOKと思います。たまに休んでもそんなに影響はありませんが、2日空けると鈍るのであまりサボらないほうが得策です。
とは言え、やっぱり疲れる日もあると思うので、最低でも5センテンス/日 くらい?これなら大体20分くらいで終わります。何となく携帯いじっている時間をカットすれば余裕で捻出できます。
妥協しないことが大切
妥協せず、最後の最後まで聞きまくってもう駄目!ってなったら答え合わせです。
まぁこんなもんでいいや、で終わらせて何となく答え合わせをしていたら、中々力になりません。
あー、なんだそうだったのかよーー!!!くっそー!!!の繰り返しが力になります。
フィードバックを忘れずに
そして、かならずフィードバックを行います。何故聞き取れなかったのか?
例えば、シャドーイングの項で触れたように、強い子音と弱い母音が連結したせいで音が消えてしまったんだということが分かれば、次に同じような文章が出てきたときにも音が聞こえない部分を脳内で補完することができます。
これは日本語でも同じです。周りがざわついた環境で相手の声が全て聞こえなくても、経験から聞こえなかった部分の言葉を補完しているのです。
これを英語に転用するためには、後付けで学習するしかありません。そのトレーニングとして、精聴・多聴が可能なディクテーションはもってこいなのです。
おわりに
今回は、発音トレーニングについて説明しました。
文法編や語彙編で行った暗記学習とは異なり、身体(主に口ですが)を使った厳しい反復トレーニングが必要であることが分かると思います。
リスニング・発音力を鍛えるためには、これまでの教育で行ってきたであろう詰め込み教育とは一線を画する練習がどうしても必要になるのです。
私自身、正直キツかったです。1, 2ヶ月毎日やったところで全然上達しないんです。マジで泣きそうなりました笑。でも諦めずに半年・1年と継続して訓練をすると、明らかに違いが出てきます。徐々に、というよりある時からピョンと飛び出すような感覚かもしれません。実はその地点はよくわからないのですが、振り返るといつの間にここまで慣れてきていたのか、という感覚です。口の筋肉痛もすっかりなくなります。
ここを乗り越えれば、聞き取りについても発話についてもストレスがかなり緩和されます。すると、楽しいですよ。英語で話すのが楽しくなるんです。こんな素敵な感覚は中々ありません。継続すればきっと大丈夫だと信じて、是非試してみて下さい ^^
次回は、補足的にリーディングについて述べたいと思います。実はそんなに話すことは多くはないのですが、大切項目もあるので、是非フォローしておきたいと思います ^^
次回
↓
www.moriken254.com